かえる作文帖

小説(掌編・短編)や随筆などを書いています。読んでくれると嬉しいです。

2019-04-12から1日間の記事一覧

春、蝶(掌編)

「サクラモドキ、っていう蝶の一種が居るんです」 っていうと彼は、きゅうにしゃがみ込んで、桜の花びらが雪のように積もっているはきだめをすくい取って、片手にいっぱいの花びら、を、ふうっ、と吹くと、ひらひらと舞い落ちる花びらが、桜の樹から舞い散る…

終末の現代(掌編)

だらけきった、老人の皮膚の垂れ下がるシワの数々の、隙間に積もる埃ほどの価値もない、なにもかも荒みきった、それでいて上品であるかのように取り繕っている、この掃き溜めの世界で、あなたは静かに、まさに掃き溜めの鶴でした、静かに本を、ニコニコとし…