かえる作文帖

小説(掌編・短編)や随筆などを書いています。読んでくれると嬉しいです。

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

相似、或る自殺者(掌編)

* 小学校の四年生のころ、細長くて軽い鉄の棒を一本、持って帰ろうとしたことがある。 当時の友人(、当時は私にも友人が居た)と探検ごっこ、街の外れのちいさな廃工場へ、その片隅に転がっていた、みすぼらしいそれは、茶色く錆びてぼろぼろな、只の鉄の棒…

夢における文脈を小説化する試み(掌編)

「そう、明らかなことだが、ニューシネマパラダイスがあるならば、オールド・ソープオペラ・ナラカもあるはずさね。」 「はァ」 「それと同じようにおまえがもし世界の中心に居るとするならばおれはいつでも世界の外縁、アウトサイダーであるのだよ。わかる…

anarchy in the JK(掌編)

あの瞬間のあの接点を中心にして、同心円状に、ひと、都市、時間、もっと詳しく言うならば、おれの両手、が握りしめる包丁、が、女子高生の胸に深く突き刺さる、おれと女子高生の、唯一の、接点、を中心として、あの瞬間、世界は、広がっていた。包丁が太陽…

桜並木の終わりで(掌編)

「やあ、桜が咲いてらあ」 「あラ本当ね、こないだ見たときは未だ蕾だったのに」 「あア、綺麗だ…」 「ええ…」 「……しかし、早いもんだね、お前はもう、大学の、ええと、三回生か。そろそろ社会人の仲間入りさね、おれは大学に行っていないから知らないが、…