かえる作文帖

小説(掌編・短編)や随筆などを書いています。読んでくれると嬉しいです。

2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

酒飲み女が仕送り増額を求め実家に送った手紙

拝啓お父さん、お母さん、お元気ですか。私がこの街に来てから、はや二年になろうとしています。私が家を出る日の駅の、プラットフォームの見送りのとき、お母さんったらまるで今生の別れでもあるかのようにわんわん泣きながら、ズボラな貴女が果たしてひと…

自己嫌悪の少女の断片(掌編)

あたしは時々、あたし自身みづからにうつくしい咒いをかけている気分になる。まったくの醜さ、未練を着飾るあさましさだと思う。……忘れたいひとの名前を、忘れたい忘れたいって思いつつ、そのくせ、事あるごとに口にして、しまいにはもう、うつくしいものや…

夜汽車(掌編)

ふだんは人いきれであろうホームに(、なぜなら仮にも大都市のターミナル駅だから、)けれども、今晩はあたりを見回しても、私以外誰も居ないものだから、或いはこの、吹雪と言っても良いような天気のせいかも知れない。まして夜も遅いから、辺鄙な所へひた走…

寓話(掌編)

どこまでも大きなグラウンドがあった。この世の果てまで続いていると思われるほどに広いようで、現に、「このグラウンドの端がどこにあるのか、その端を見つけてこよう」と言って駆け出した彼は、未だに戻ってこない。その大きなグラウンドのいろいろな場所…