かえる作文帖

小説(掌編・短編)や随筆などを書いています。読んでくれると嬉しいです。

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ラノベ風ナンセンス(掌編)

オレは冴羽緑雨、16歳。どこにでも居る普通の男子高校生だ。 ……不安だからもう一度言っておこうか? オレは冴羽緑雨、16歳。どこにでも居る普通の男子高校生だ。 ……念のため確認しておくが、「オレ」が「どこにでも居る」わけじゃないからな。先程の発話はそ…

スケッチ

賃貸でタバコを吸っていると妙な具合に唾が分泌されるから、排水口に吐き出しながら吸っていると、あるとき失敗して、シンクの淵まで飛んでった。さみしくて、笑った。 灰皿にタバコを揉み消すと千々の火種が手持ち花火のように懐かしい。 外は月夜で三日月…

居酒屋の男と女(短編)

舞台背景を素描しなければならない。手短にやろう。 平日の夜の居酒屋。混み合っているが満員ではない。シラフで居ればうるさいが、酔いが回れば心地良く聞き流せる程度のざわめきである。酔っ払いばかりだが度を超えて騒ぐ輩は一人も居ない。不愉快な大学生…

包丁(掌編)

「しかしその、おれはキミドリのファーストアルバムを聴いてそれほど感銘を受けなかったわけだが、いやはっきり言って、はっきり言っても構わないね?いやそのつまり、君の感性を疑ったね。もっと音楽として構築すべき世界観というか、わかるだろう、もっと…