かえる作文帖

小説(掌編・短編)や随筆などを書いています。読んでくれると嬉しいです。

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

低級アレゴリー(掌編)

「なるほど、では、お前はつまり、いわゆる『神様』であるわけだ」 「ええ、ええ!先ほどからそうだと何遍も言っているでしょう!『おめでとうございます、あたしは酸素分子第1000番目の付喪神です!あなたの肺に吸い込まれたから、こうして姿をあらわしてい…

連れ出して!(掌編)

人、人、ひと!ほんの幼い子どもを金切り声で怒鳴り飛ばす母親、通路の途中で唐突に立ち止まる若者、申し訳程度に置かれたベンチに並んで座りその全員が淀んだ目で携帯を触っている家族づれ、コーヒーでも飲みながら腰を落ち着けようと思っても、どこの店に…

まちあわせ(掌編)

『夜七時、駅前の喫茶店で』。 葉書には、これだけが書かれていた。裏を見ても、差出人の名前どころか、私の住所すら書かれていなくて、とうぜん消印もない。 あなた宛ての郵便物が一杯になっている、と大家に警告されたものだから、仕方なしにポストへ郵便…

風前に塵を積む(掌編)

* きょうは精神科へ行ってきた。いつも通っている精神科で、あたしには不眠の気と抑うつ感があるからだ。そうして、抗うつ剤と睡眠薬を処方してもらって、それを飲み続けていて、けれども最近、睡眠薬を飲んでいても何だかとても寝つけないし、それに、毎晩…